2024年4月、熊本県鹿本高校サッカー部員など18人が落雷で病院搬送される事故が発生。2025年5月に公表された事故調査委員会による調査報告書が示した5つの再発防止策と、熊本県教育委員会の具体的対策、学校現場で今すぐ実践できる雷安全対策を解説します。

学校の部活動中に起きた落雷事故の概要と調査結果
落雷事故概要
2024年4月、宮崎市内のサッカー場に雷が落ち、遠征で訪れていた熊本県の県立鹿本高校のサッカー部員など18人が病院に搬送されました。
事故要因の分析
報告書では、事故発生の要因は「客観的には落雷がありうる状況で、屋外での活動を継続していたこと」としています。
当日の状況:
- 天気確認は目視とスマートフォンの雨雲レーダー
- 午前中は雷鳴で試合を中断 → 適切対応
- 事故直前は雷鳴・雨風は確認されず → 活動続行
- 周囲に避雷設備は不十分
なお、被害生徒について、ほかの生徒との間に服装などの有意な差はなく、なぜ被害生徒に落雷したかは説明できないとされています。
事故調査委員会が示した「5つの事故防止提言」
1. 雷に関する最新の正確な知識の習得
- 教職員・生徒両方への理解徹底
- 雷の発生メカニズムと危険性の共有
2. 屋外活動時の気象情報確認
- 雷注意報の有無を必ずチェック
- 屋外活動の前の時点から、インターネット等を活用して正確な情報を得る
- 気象庁の雷ナウキャスト活用
- 1時間先までの雷の可能性や激しさを予測できる
- 過去3時間の雷活動状況も確認でき、雷雲の動きを把握可能
3. 危険を感じたら即時中止・避難
- ためらわない判断の重要性
- マニュアル整備による判断の迅速化
4. 活動再開の判断基準の明確化
- 屋外活動の再開条件
- 「雷ナウキャスト」や天気アプリで上空に雷雲がないことを確認
- 活動場所の周辺で30分以上、雷が発生していないことを確認
- 新たな雷雲が発生していない、または近づいていないことを確認
- これらすべてがそろった場合に、避難を解除し屋外活動を再開する
5. 避難方法と代替活動の事前整備
- 安全な避難ルートの設計
- 屋内代替プランの準備
熊本県教育委員会の具体的対策
調査委員会の報告・提言を受けて、熊本県教育委員会は以下の実務的な対策を展開しました。
- チェックリスト配布(指導者・児童・幼児向け)
- 危機管理マニュアル作成の参考資料配布
- 危機管理マニュアルの見直し義務化
- 雷に関する基礎知識資料配布
- 児童生徒等・教職員への研修義務付け
さらに、文部科学省は令和7年6月12日付で全国の教育委員会等に通知を発出し、雷安全対策の徹底を求めています。
通知文書はこちら → 文部科学省通知(PDF)
学校現場で今すぐできる雷安全対策
【事前準備編】日常的な安全管理
気象情報の確認体制
- 屋外活動前に雷注意報をチェック
- 雷ナウキャストで1時間先まで予測
- 体育授業・部活動の判断基準を明文化

避難計画の策定
- 最寄りの建物までの安全ルート確認
- 生徒への周知と定期的な確認
【実践編】雷発生時の対応手順
- 事前の判断基準に従い、基準に達したら即中止
- 建物内への迅速な避難誘導
- 全員の安全確認
- 気象情報で状況把握
- 安全確認後の活動再開判断
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まとめ|子どもの命を守る雷安全対策チェックポイント
今すぐ実践できる対策
- 屋外活動前の気象情報確認を習慣化
- 雷の兆候があれば即時中止・避難
- 避難ルートの事前設定と生徒への共有
- 教職員向け雷安全研修の実施
- 危機管理マニュアルの雷対策項目見直し
検討したい補完対策
- 雷検知器導入による早期警戒システム
- 保護者への対応方針説明
- 地域の気象特性に応じた個別対策
熊本県鹿本高校の事故を教訓に、教育委員会が示した指針を参考にしながら、それぞれの学校の実情に合わせた雷安全対策を進めることが、子どもたちの命を守る第一歩となります。
