「大丈夫だろう」が一番危ない
山やキャンプ場での雷事故は、毎年後を絶ちません。気象庁の統計によると、日本では年間に多数の落雷が記録されており、特に山岳地帯や開けた野外は落雷リスクが高い環境です。「天気予報が曇りだったから」「鳴り始めたばかりだから」という判断の遅れが、命取りになることがあります。
登山やキャンプを楽しむためには、雷の基本的な性質と、いざというときの行動をあらかじめ知っておくことが不可欠です。本記事では、屋外レジャーで実践できる雷対策を場面ごとにまとめました。

登山・キャンプ中の雷、なぜ危険なのか
山の雷は「逃げ場が少ない」
登山中の稜線や山頂付近は、周囲に高い構造物がなく、人間が最も高い突起物になってしまいます。木の下も落雷の危険があり、車のような避難先もない。山では、そもそも安全な逃げ場が限られているのです。
気象庁によれば、雷は積乱雲(入道雲)の発達とともに発生します。山では地形の影響で積乱雲が急発達しやすく、地上よりも短時間で天候が悪化することがあります。
参照: 気象庁「雷ナウキャスト」

テント・タープは雷から守ってくれない
テントやタープは雨は防いでくれますが、雷に対しては無防備です。特に金属製フレームのタープは注意が必要。また、テント内にいると雷鳴が聞こえにくくなり、天候変化への気づきが遅れることもあります。
キャンプ場の木の下も危険
「大きな木の下なら雨も防げてちょうどいい」という発想は危険です。孤立した大木は雷の標的になりやすく、木への落雷は「側撃雷」として周囲数メートルの人にも影響が及ぶことがあります。

シーン別|雷が来たときの正しい行動
登山中:稜線・山頂にいるとき
稜線や山頂は、雷が最も集中しやすい場所のひとつです。
- すぐに樹林帯へ下山する(目安:雷鳴が聞こえたら即行動)
- ストック・ピッケルは水平に持つか、岩場から離した地面に置く
- 金属製ギアは手放さなくてもよい(落雷リスクは位置の高さに関係するため)
- 山小屋に避難できる場合は迷わず入る
雷から逃げられない場合の緊急姿勢(「雷しゃがみ」):
両足をそろえ、かかとを上げ、低い姿勢でしゃがむ。地面との接地面積を最小限にする。横になるのはNG。
キャンプ中:テント・タープにいるとき
- テントやタープをすぐに離れ、車内か建物内に移動する
- 車のない場所では:周囲より低い場所で、木や電柱から5m以上離れてしゃがむ
- 複数人でいる場合はバラバラに散る(連鎖して感電するリスクを下げるため)
- 調理器具や焚き火台などの金属製品からも離れる
木の近くにいるとき
木から4m以上、できれば5m以上の距離をとる。特に孤立した1本の大木は要注意。木の下への避難は絶対にしないでください。

「30-30ルール」を覚えておこう
気象庁や防災機関も推奨する、避難タイミングの判断基準です。覚え方はシンプル——「30秒で避難、30分で解除」。
| タイミング | 行動 |
|---|---|
| 稲光を見てから30秒以内に雷鳴が聞こえたら | → すぐに避難を開始 |
| 最後の雷鳴から30分間は | → 安全な場所にとどまる |
なぜ「30秒」で避難?
光はほぼ瞬時に届きますが、音は約3秒で1kmしか進みません。この差を利用して、稲光から雷鳴までの秒数を3で割ると、おおよその距離がわかります。
| 稲光→雷鳴 | 距離の目安 |
|---|---|
| 3秒 | 約1km 🔴 すぐそば |
| 15秒 | 約5km 🟡 即避難 |
| 30秒 | 約10km 🟡 避難開始 |
30秒以内に聞こえたら、雷雲は約10km以内。雷雲は時速20〜40kmで移動するため、15〜30分で頭上に届く可能性があります。稲妻を見た瞬間が、判断のスタートラインです。
雷鳴しか聞こえない曇天でも、「聞こえた=10km以内」と考えてOK。迷ったら避難が正解です。
なぜ「30分」待つ?
「もう鳴り止んだから大丈夫」——この油断が一番危険です。雷雲は複数のセルで構成されていることが多く、ひとつ通過しても後続のセルが再び落雷をもたらすことがあります。最後の雷鳴から30分間は、安全な場所でじっと待ちましょう。
ただし、30-30ルールだけでは足りない場面も
風が強い日や沢沿いでは雷鳴が聞こえにくく、テント内では気づきが遅れます。こうした場面を補うのが、音ではなく雷の電磁波を直接検知する「雷報」。30-30ルール(目と耳)+ 雷報(電磁波)の組み合わせで、避難判断の精度が上がります。

これは気象庁や防災機関も推奨する行動基準のひとつです。「鳴り始めてから動く」では遅い場合があります。稲妻を見た瞬間に判断を始めましょう。
事前にできる安全対策チェックリスト
出発前に確認しておくべきことをまとめました。
- 出発前にまず何を確認すればいい?
-
気象庁の「雷ナウキャスト」で当日の雷予報を必ずチェック
- 登山ルートで事前に調べておくべき場所は?
-
管理棟や炊事場など、頑丈な建物の場所を事前に確認しておくと安心
- 夏の午後のスケジュールで気をつけることは?
-
夏の午後は天気が急変しやすいから、余裕を持ったスケジュールを組む
- 現地に着いてから意識することは?
-
こまめに空模様を確認する習慣をつけよう。変化に早く気づくことが大事
雷の接近を事前に知るために|雷報の活用

天気予報アプリは広域の天気を確認するには便利ですが、局所的な雷雲の急発達を見逃すことがあります。また、登山中はスマホで逐一チェックするのも難しいですよね。
そこで活用したいのが、携帯型の雷検知器「雷報(らいほう)」です。
雷報は、雷の発生時に放出される電磁波を独自設計の回路基板でキャッチし、最大60km先の雷をリアルタイムに検知してアラームで知らせるコンパクトな機器です。検知範囲はHi(40〜60km)・Lo(30km以内)の2段階で切り替え可能。電池式で、山奥やキャンプ場でも使えます。サイズは名刺ほど、重さは電池込みで100g未満とコンパクト。ザックやポケットに忍ばせておくだけで、天気アプリが「曇り」の状況でも雷雲の接近に気づくことができます。
※ 雷報は雷接近を知らせるための補助ツールです。気象情報と組み合わせて使用し、早めの避難行動を取ることが重要です。雷から完全に身を守ることを保証するものではありません。



まとめ|今すぐできる3つの準備
- 出発前に雷ナウキャストで予報を確認し、雷注意報が出ていたら計画を柔軟に変更する
- 稲妻を見たら30秒以内の雷鳴を基準に、すぐ避難行動を開始する
- 電波が届きにくい場所や天気アプリに頼れない状況では、雷検知器を携帯しておくと行動判断の一助になる
雷そのものを防ぐことはできませんが、早めに気づいて行動する準備は誰でもできます。大切な人と楽しむアウトドアを、できるかぎり安全に。
参照情報
- 気象庁「雨雲の動き・雷ナウキャスト」:https://www.jma.go.jp/bosai/nowc/
- 気象庁「北陸地方の気候 冬季雷について」:https://www.data.jma.go.jp/cpd/j_climate/hokuriku/column03.html

